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東京高等裁判所 昭和53年(行ケ)192号 判決

請求原因一ないし三の事実は、当事者間に争いがない。そこで、原告主張の審決取消事由の存否について、判断する。

商標法第五一条第一項の規定による商標登録の取消には、他人の業務に係る商品と混同を生ずることについて、商標権者に故意の存することが要件であるところ、商品の混同を生ずることについて原告に認識がなかつたこと、したがつて、故意のなかつたことは、当事者間に争いがない。

右のとおりである以上、本件は、右規定による登録取消の要件を欠くことになり、原告に右の故意が存するものとして登録取消を認めた本件審決は、違法に帰するものといわなければならない。

よつて、本件審決の違法を理由に、その取消を求める原告の本訴請求を正当として認容する。

〔編註〕 本件における請求原因は左のとおりである。

一 特許庁における手続の経緯

原告は、登録第一一六一九八号商標(以下「本件商標」という。)の商標権者であるが、被告は、原告を被請求人として昭和四六年二月一日右商標登録取消の審判を請求したところ、特許庁昭和四六年審判第一四八四号事件として審理され、昭和五三年九月二八日右商標の登録を取り消す旨の審決があり、その審決の謄本は同年一〇月一八日原告に送達された。

二 本件商標

本件商標は、「福おこし」の文字を行書体で縦書にしたものであり、「オコシ」を指定商品とし、大正九年二月二日登録出願、同年五月二六日設定の登録がされたものであり、昭和一四年六月二六日及び昭和三四年九月三日に商標権存続期間更新の登録がされている。

三 本件審決の理由の要旨

本件商標は、前項掲記のものである。請求人(被告)の引用する登録第六二八七五八号商標(以下「引用商標」という。)は、楷書体で「新大阪」の漢字を縦書にしたものであり、第三〇類「菓子、パン」を指定商品とし、昭和三七年八月一日登録出願、昭和三八年一一月一一日設定の登録がされたものである。

被請求人(原告)は、商品「おこし」について、別紙(一)ないし(四)に示すとおりの構成の商標を使用した。

本件商標と別紙(〔編註〕省略)(一)ないし(四)の商標とを対比すると、本件商標は、「福おこし」の文字を縦書にしてなるのに対し、別紙(一)ないし(四)の商標は、いずれも「福おこし」の文字を「新大阪」なる文字の下部に顕著に書してあり、「フクオコシ」の称呼を生ずるものであるから、両者は、いずれも「フクオコシ」の称呼を同じくする類似の商標である。

次に、引用商標と別紙(一)ないし(四)の商標を対比すると、引用商標は、「新大阪」の漢字を縦書にしたものであるから、「シンオオサカ」の称呼を生ずるのに対し、別紙(一)ないし(四)の商標は、その中央部に行書体風の「福おこし」の文字を書し、その上段にゴシツク体の「新大阪」の文字を書し、「新大阪」の文字は、「福おこし」の文字と外観上明らかに書体を異にして二段に表示してあるので、右「新大阪」の文字から「シンオオサカ」の称呼をも生ずるものである。

結局、引用商標と別紙(一)ないし(四)の商標とはその称呼を同じくし、被請求人が商品「おこし」について使用する別紙(一)ないし(四)の商標は、請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある。

しかして、被請求人は、請求人の引用商標の存在を認識していたものというべく、被請求人の別紙(一)ないし(四)の商標の使用は故意にしたものといわなければならない。

したがつて、被請求人は、故意に同人の有する本件商標の指定商品についての登録商標と類似する商標の使用であつて、請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるものを使用したことが明らかである。よつて、本件商標は、商標法第五一条第一項の規定により、その登録を取消すべきものである。

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